11月に入り、グンと寒い日が増えました。
冷やりとした空気に触れると「いよいよ入試本番が近づいてきた」
と、身が引き締まります。
入試が近づくと増えるのが、入試に関するご相談の電話やメール、そして塾での面談です。
中学生の学校三者面談前に行う塾での三者面談、それから再来年に入試をひかえた高2、中2の入塾面談…11月は面談ラッシュで、大忙しです‼
昨日も講義後に中学部講師が受験生とお母様と三者面談、私は高校生の入塾前の教育相談を行いました。
私は中学生の三者面談には残念ながら私は同席できませんでしたが、事前に中学部講師と打合せで相談していたため、大きな変更などもなく志望校が決定。
一安心です。
そこで今日は、中学3年生の進路決定についてのお話。
塾を開業する前のある経験
学習塾アンフィニを開業する前、私は家庭教師や集団指導塾・個別指導塾など様々な形態の塾で勤務していました。
どの会社でも生徒の志望校は、上司(教室長や教務主任など)とのミーティングで決定し、その進路を講師が生徒や保護者様に提案します。
ただ、この決定と提案には、私自身、納得できないことも少なくありませんでした。
ある会社で家庭教師として働いていた時、ちょうど今くらいの時期にあわてて駆け込んできた中学3年生がいました。
彼女は内申ランクも学力テストの成績もちょうどボーダーラインからちょっと足りない。
残り日数での成績の伸びると仮定しても、合格可能性は50%あるかどうかでした。
11月の駆け込み受講です。
時間もありませんし、短期間で成績が伸びる前提で受験させるのはリスクが大きい。
会社としては「安全圏を受験させる」
要するに志望校を一つ落とすという判断でした。
やっと芽が出た小さなやる気
彼女は正直、中学3年間あまり勉強に対してまじめにとりくんでいたわけではありません。
ただ、「ここに行きたい」となった途端にスイッチが入ったのでしょう。
勉強の経験が少なく長時間集中するのも大きな苦痛。
そんな中で、一生懸命勉強に向き合っていました。
その様子をみていると、「何とか第一志望に合格させることはできないか」と考えるようになりました。
ただ、合格可能性は半々の50%
学校でも志望校の変更をすすめられていました。
私自身、会社では「先生、ジャッジすることも大切だから」と言われました。
この言葉は「早く説得してね」という意味。
ご家庭では第一志望に賛成しているものの、それ以外の大人は全員反対。
ついには、「じゃあ、近くの高校でいいや」「もう勉強しなくても入れるから、受験勉強しない」と言うようになりました。
せっかく芽を出した小さなやる気の芽は、つみ取られる寸前でした。
合格率100%の広告の破壊力
春になればこんな広告が入ります。
「公立高校全員合格‼」「合格率100%です‼」
このチラシ、CMの破壊力は抜群です。
そこに行けば絶対に受かるというメッセージなのですから、すごく魅力的。
でも、春にその広告を入れるために、いったい何人の生徒が入試前に涙をのんでいるか、ご存知ですか?
私がこのとき「ジャッジしてね」と言われたこの出来事も、まさにその状況なのです。
結局、彼女はどうなったか…
何と、第一志望校に合格しました‼…ギリギリで(笑)
最終的に、私は彼女にGOサインを出し、それから3ヶ月、まさに死に物狂いで勉強しました。彼女も必死でしたが、私も必死でした。
それが上手くかみ合い、運も味方して合格を勝ち取ることができました。
私は毎年必死にやっていますが、このときはさすがに胃が擦り切れる想いでした(^^;)
志望校決定前の中学3年生に伝えたいこと
まだ志望校が決まっていない、悩んでいる中学3年生は多くいると思います。
そんな中学3年生と、その保護者様に私から伝えたい事が2つあります。
諦めないことだけが大事というわけじゃない
「諦めずに努力すれば結果はついてくる」
残念ながら受験はそうそう単純ではありません。
みんな努力はしているのです。
ですから「諦めない」ということだけが大事とは考えていません。
私は今話した生徒と同じ合格可能性で、一つ志望校を下げる判断をしたこともあります。
不合格になった場合、自信を無くして勉強への意欲が無くなる生徒がいるのも事実です。
志望校を一つ下げれば良かったと、ずっと後悔する子もいます。
ですから、塾での三者面談では、受験に伴うリスク(不合格になった場合のこと)を、丁寧に説明しています。
受験生と保護者様を前にして、不合格になったときは~と話すのはとっても気が重いのですが、大事なことなので省くわけにはいきません。
ただ、この説明をしても結局、「いや!挑戦します‼」と言う生徒がうちの塾に多いのは気のせいでしょうか…
チャレンジ精神旺盛なのはすでにアンフィニの精神になりつつあります(^^;)
合格することだけが大事でもない
志望校を決定する場合に大切な判断基準は、ボーダーラインを超えているかということだけではありません。
考えるべきことは、将来、大学や専門学校に進学することを考えた上で、この高校入試をどんな形で乗り越えるのがベストなのかということです。
第一志望を回避して志望校を下げて合格したことで「大学も行けるところに行けばいい」と、受験に向かう意識が低下してしまう生徒もいます。
あまり努力せずに合格できますから、受験前のスパートもかけれません。
受験直前の緊張感の中でも勉強を経験できず、そのストレスも体験できません。
大学入試が初めて受験と向き合う機会となってしまいます。
受験直前は合格だけが素晴らしく思われます。
誰でも不合格は嫌ですし、余裕をもってボーダーラインを超えていたいものです。
でも、3年後を考えた時、合格にはデメリットも伴っているのです。
志望校決定はバランス感覚が命
楽な三者面談や、簡単な志望校決定などありえません。
どんな生徒でも悩み、不安を感じるものです。
逆に不安が少なすぎると、「頑張らなくても合格できる」という、先ほど話した意識の低下した状態へ突入してしまう危険性があります。
志望校決定は様々な要素から、慎重に話し合い、互いに納得できる決定になるように判断しなければなりません。
そのため、当塾では、1日に講師1人当たり1人しか三者面談の予定を組みません。
これは3年生だけではなく、全ての学年でそうです。
だいたい30~60分、長い時だとそれ以上の時間をかけてじっくり話し合います。
『大きな変更もなく志望校が決定しました。一安心です』
冒頭の言葉には、長くなってしまったこの文の全ての想いがつまっています。
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